from 福井義高 AngelRabbits LLC
ここのところ、銀行に対する業務改善命令が相次いでいるとの報道が目に付きます。
先般、多くの職員が処分された政府系金融機関とともに共通するのは、融資業務に関する不正行為という点です。
松下幸之助の発言が源とも言われる「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」という言葉が昔から銀行を揶揄するものとして使われます。
それを踏まえると、貸しにくい企業へも創意工夫して融資を実現するとは立派じゃないか。。。という意見があっても良さそうなものですが、そのような声は聞こえてきません。
収益が伸びなければ努力が足りないと批判され、不正は論外としても融資を積極化し、万が一にも不良債権化しても批判される銀行の存在意義とは何でしょうか。
銀行法第一条を見てみましょう。
「(目的)第一条 この法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」
国民経済の発展、即ち日本国の法定通貨を中核とした国内の中央集権システムの維持が目的で、その中でも具体的に預金者の保護が重要であることが分かります。
預金者保護が最優先、つまり預金を全額払い出せるように維持するということは、銀行は元本が毀損するようなリスクを取ってはならない、即ち絶対に満額回収可能な運用しか行ってはならないと読めます。
実際、銀行法において銀行業務と記載されているのは、
「預金又は定期積金の受入れ」
「資金の貸付け又は手形の割引」
「為替取引」
の三点であるものの、わざわざ目的に特記されているのは預金者の保護です。
要するに全ての銀行にとって最優先されることは、預金者に対して適法な要求があり次第、要求された金額だけ払い戻しを行うことができるようにすることです。
とは言え、資金を受け入れるだけでは収益が上がりませんので、受け入れた資金で国債や有価証券への投資、企業、団体や個人に対して貸付を行い、金利の差額で収益を得ているということになります。
銀行法第一条でわかることは、貸付を通じて企業の成長や個人の生活を支えるというようなことは、銀行の使命ではないということになります。
冒頭に挙げた金融機関がなぜ業務改善命令を受けるに至ったか、つまりは収益手段でしかない貸付に奔走するとは本末転倒ではないか、とのお叱りを受けたことと理解されます。
銀行の使命は終わったという言葉は、昭和の頃から囁かれており、特に昨今強く言われることが多いように思われます。
2009年には「資金決済に関する法律」が施行され、銀行以外にも決済業務ができるようになりましたし、貸付に至っては古くからノンバンクと呼ばれる貸金業者が活躍しています。
更にこの動きに拍車をかけているのが、クラウドファンディング、ソーシャルレンディングと呼ばれるような、個々人が応援したい、あるいは有望と考えた事業やプロジェクトに対して直接貸付や出資が可能なサービスの広まりです。
※クラウドファンディング、ソーシャルレンディングの解説は以下を参考にしてください。
https://www.crowdport.jp/news/3644/
https://cf-hikaku.net/faq/1543/
ブロックチェーンの世界では個々人同士が資金決済や資金調達を行うことが一層容易になってきています。
日本の個人金融資産が1829兆円と過去最高を更新し、その5割以上が現金や預金です。
預けるのも銀行、借りるのも銀行という常識から一旦距離を置いて、どんなことが考えられるか色んな話を聞いてみるのも良いかも知れません。