コラム

激動の時代に勝ち残る企業の秘密:今こそブランディングに投資すべき5つの理由

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2024年、再び就任したトランプ大統領の強硬な関税政策により、世界の市場が大きく揺れています。中国をはじめとする主要国への関税強化の影響は、日本企業にも及び始めており、多くの経営者が先行きに不安を感じているのではないでしょうか。

先が見えない今、目先の問題対応に集中しがちです。しかし、このような時代だからこそ、ブランディング戦略に積極的に取り組むべき好機とも言えます。激動の時代を生き抜くには、単なる価格競争ではなく、本質的な価値を訴求できる強いブランド力が必要だからです。

なぜ今、ブランディングなのか?

「今は守りの時期、ブランディングなどの投資は景気が良くなってから」——そう考える経営者の方も多いでしょう。しかし、歴史を振り返ると、不況期にブランド投資を続けた企業こそが、回復期に大きく飛躍しています。

例えば、2008年のリーマンショック時に広告費を削減せず、ブランドメッセージを強化し続けたアップルは、その後10年で株価を約10倍に伸ばしました。対照的に、コスト削減に走った競合企業の多くは、市場回復時に出遅れ、シェアを失いました。

では、現在の経済環境において、なぜブランディングが重要なのでしょうか。その理由を5つご紹介します。

市場変動に強い「価格以上の価値」を創る

関税の影響で価格上昇が避けられない状況では、単に「安さ」で勝負してきた企業が大きな打撃を受けます。一方、「このブランドだからこそ買いたい」と思わせる価値を確立できている企業は、多少の価格上昇があっても顧客の支持を失いません。

例えば、高級車ブランドのポルシェは、景気後退期でも売上を大きく落とすことがありません。顧客は単なる「移動手段」ではなく、ポルシェが約束する「走る喜び」や「ステータス」に価値を見出しているからです。

あなたの会社は、価格以上の価値を顧客に提供できていますか?

 国内外での競争優位性を確保する

貿易環境が厳しくなれば、すべての企業が同じように関税負担という課題に直面します。そんな中、価格だけでなく「なぜあなたの会社と取引すべきなのか」という明確な理由を持つ企業だけが、困難な状況でも選ばれ続けます。

ある中小の部品メーカーは、「技術力と対応の速さ」を徹底的にブランド化することで、価格だけの勝負に陥ることなく、顧客との関係を強化しました。関税の影響で価格が上がっても「あの会社からしか調達したくない」と言われる関係を構築しています。

あなたの会社と取引する「唯一無二の理由」は何ですか?

不安な時代に求められる「信頼」を構築する

市場が不安定になればなるほど、人々は「安心」「信頼」を求めるようになります。この心理は、個人の消費行動だけでなく、企業間取引にも当てはまります。

一貫したブランドメッセージを発信し続けることは、「この企業は約束を守る」という信頼の証です。不安定な時代だからこそ、ブランドを通じて伝える「私たちの変わらない価値観」が、顧客の安心感につながります。

ある食品メーカーは、関税による原材料高騰の中でも「品質は絶対に落とさない」という姿勢を明確に打ち出しました。その透明性と一貫性が消費者からの信頼を高め、売上を維持することに成功しています。

あなたの会社は、どんな「約束」で顧客の信頼を得ていますか?

価格競争から脱却する差別化戦略

経済環境が厳しくなると、多くの企業は反射的に価格を下げて売上を確保しようとします。しかし、そのような価格競争のスパイラルは、業界全体の収益性を低下させ、最終的には誰も勝者とならない結果に陥りがちです。

ブランディングによる差別化は、このような消耗戦から脱却する有効な手段です。自社だけの独自の価値を明確にし、顧客にとっての「選ぶ理由」を創出することで、価格だけでは測れない関係性を構築できます。

例えば、環境負荷削減に取り組む建材メーカーは、「サステナビリティ」をブランドの中核に据えました。これにより、価格競争に巻き込まれることなく、環境意識の高い顧客層から強い支持を集めています。

あなたの会社は、どんな「唯一のストーリー」で競合と差別化していますか?

⑤ 回復期に向けた「跳躍台」を今から準備する

経済の歴史を見れば明らかなように、どんな不況も必ず終わります。そして、回復期に最も早く成長するのは、不況期にブランド構築に投資し続けた企業です。

不況期は、むしろブランディングの「好機」とも言えます。多くの競合が広告宣伝費を削減するため、情報の「ノイズ」が減り、自社のメッセージが届きやすくなるからです。この機会を活かし、市場回復時に「真っ先に思い出される企業」となるための基盤を作りましょう。

1930年代の大恐慌時にマーケティング投資を続けたP&Gは、景気回復後に大きく事業を拡大しました。今日の同社の強固なブランドポートフォリオの礎は、まさにこの時期に築かれたものです。

あなたは、市場回復時に「最初に思い出される企業」になるための準備ができていますか?

逆境こそブランドを鍛える時

関税強化や市場の混乱は、確かに企業経営に大きな課題をもたらします。しかし、この逆境をブランド力向上の機会と捉え、価格以上の価値を創出し、顧客との信頼関係を深める——そのような姿勢が、激動の時代を生き抜き、次の成長ステージへと飛躍するための鍵となるでしょう。

今こそ、「なぜお客様は私たちを選ぶのか」という本質的な問いに向き合い、強いブランドを構築する絶好の機会です。

著者・文責 (Author / Responsible for the text)

平松誠一 (Seiichi Hiramatsu)

NTTドコモ出身。在籍時は一貫して広告宣伝・マーケティングに携わる。 1996年NTTドコモを退社。独立後の現在、企業ブランディング支援会社の株式会社ベレネッツの代表取締役。
ドコモ時代は、その潤沢な広告予算で業界TOPを突き進むことができると思っていたところ、はるかに広告投資額の少ないNCC(新たに参入してきた携帯電話、ポケットベル業者)にボロ負けし、その結果から「これからの時代、ブランドの支持を得るには押し込むようなPUSH的戦術やマス媒体での広告戦術は効果なし」との認識を持つ。
以降はこれらの手法を反面教師とし、「引き寄せる」+「再現性のある」ブランディング+マーケティング事業に25年間以上携わっている。
重要なことは、ブランディングはロゴを作ったり、イメージチェンジをすることではなく、ターゲット層に刺さる認識を構築することだと考える。

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