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大手企業のブランディング戦略を真似るのは大間違い

テレビ東京「ガイアの夜明け」を見たり、USJ立て直しで有名な森岡さんの事例を見たりすると、自社もできるかも、って思ってしまいます。

そうです。企業ブランディングに取り組もうとする多くの中小企業が、まず行うのは「成功している大手企業の真似」をすることになってしまうのです。
成功事例系の書籍はたくさんAmazonにも出ていますから買ってしまうのはしょうがないとは思うのですが、広告に巨額を投じ、華やかなキャンペーンを展開する大手企業の手法は、一見するとマネするに値する“正解”に見えるかもしれません。

しかし、それは“企業の規模”および“リソースの量”さらに“すでに築かれたブランド認知”が前提となった戦略であり、残念ながら中小企業には通用しない場合がほとんどです。
むしろ、それをそのまま実行しようとすれば、企業の資金やエネルギーを浪費し、結果的に大きな失敗を招く可能性が高いのです。

大手企業の戦略は“全方位型”、中小企業には不向き

大手企業は、膨大なマーケティング予算を背景に、全方位にメッセージを届ける「量」の戦略を得意としています。
例えば、テレビCM、新聞広告、SNSキャンペーンなど、同時多発的に情報を発信することで、より多くの消費者にリーチします。資力のある大手企業にとっては、一度に広範囲をカバーすることが最大の武器であり、それが効率的です。
ベレネッツで言うところの「絨毯爆撃」です。

しかし、中小企業がこれをマネした場合、結果はどうなるでしょうか?
限られた予算で全方位に手を伸ばせば、どのアプローチも中途半端になり、ターゲットに響くどころか埋もれてしまいます。結局のところ、「誰にも刺さらない」コミュニケーションとなり、効果はほとんど得られません。
売上数十億の中小企業の屋台骨を揺るがすような投資なんてできませんよね?

ブランド認知度のギャップを埋めるには?

先ほど触れたように、大手企業は、もともと高いブランド認知度を持っています。そのため、新しい製品やサービスを展開する際でも、既存のブランド力を活かして消費者に安心感や信頼感を与えることができます。
一方、中小企業にとっての現実はどうでしょう?「そもそも知られていない」「そもそも信頼されていない」というスタート地点から始める必要があります。
この現実を無視し、大手と同じ手法を取れば、いくら投資をしても効果は限定的です。

ブランド認知をゼロから構築するには、むやみに広げるのではなく、徹底してターゲットを絞り込み、その層に「伝わる」メッセージを発信することが重要です。
特に、まだ気づかれていない潜在的な課題を明確にし、それに対して「自社ならでは」の価値を訴求することが効果的です。
例えば、ニッチはニッチでも、特定のターゲット層の対象者が多い(対象顧客数が多い)場合、グローバルニッチで攻めることができます。

中小企業が目指すべきは「狭く深く刺さる戦略」

中小企業に求められるのは、大手のように「量」を追求する戦略ではなく、「質」を重視した戦略です。ターゲット層を徹底的に絞り込み、彼らの課題や悩みに寄り添ったメッセージを発信することが鍵です。
これこそ、ブランディングで脚本を作り、「何がターゲット層に刺さるか」を言語化し、それをマーケティング戦略でターゲット層にぶつけていくのです。

例えば、ある部品メーカーは、「高品質な製品を提供する」という一般的なメッセージではなく、「製造工程での不具合を85%削減する品質管理システム」という具体的な価値を前面に打ち出しました。
さらに、「製造現場の困りごとを解決する」というブランドメッセージを一貫して発信することで、大手製造業からの直接取引を実現。従来の下請け的なポジションから、「製造現場の課題解決パートナー」という新たな立ち位置を確立しました。

また、中堅のソフトウェア開発企業は、「顧客の業務プロセスに深く入り込み、現場の声を反映したシステムを構築する」という特徴を強調。大手SIerにはできない「現場密着型の開発アプローチ」を武器に、特定業界でのシェアを着実に拡大していきました。

このように、自社の”隠れた価値”を業界特有の文脈で再定義し、それを軸にしたメッセージを発信することで、大手企業との差別化が可能になります。
重要なのは、単なる機能や性能の優位性ではなく、顧客企業の経営課題や業務課題に対する具体的な解決策を示すことなのです。

価値が見つからない企業でも希望がある – TRUST理論という特別な視点

通常のブランディングでは、企業の強みや差別化要素を見出すことから始めます。
しかし、「うちには特に強みがない」「他社と大きな違いがない」と悩む企業は少なくありません。

そんな企業に光を当てるのが、ベレネッツ独自の「TRUST理論」です。
これは25年以上、700社以上の実績から確立された特別な方法論で、「透明性」「衝撃性」「独自性」「必然性」「物語性」という5つの視点から、企業の隠れた価値を発掘します。

例えば、ある無名の製造業の会社は、一見するとごく普通の下請け企業でした。競合と比べても特筆すべき強みは見当たらず、価格競争に巻き込まれる日々が続いていました。
しかし、TRUST理論を通して企業を見直すことで、意外な発見がありました。

「透明性」の視点からは、他社が開示を避ける技術工程を積極的に公開する姿勢が、「物語性」の視点からは、創業者が技術革新にかけた情熱や、職人たちの技術継承への想いが浮かび上がってきました。

これらの要素を効果的に組み合わせることで、それまでの「安いが品質が不安」という認識から、「高度な技術力を持つ真の実力者」という印象へと劇的な転換を果たしたのです。
広告予算をかけずとも、顧客からの信頼を獲得し、直接取引の増加につながりました。

このように、TRUST理論は、通常のブランディング手法では見過ごされがちな価値を見出し、競争力の源泉へと変える可能性を秘めているのです。

大手のマネではなく、自社だけの道を切り拓け

中小企業にとって成功の鍵は、大手のマネをすることではなく、自社の中に眠る価値を発掘し、それを独自のメッセージでターゲットに伝えることです。模倣は一見近道に思えるかもしれませんが、実際には「自社の強みを埋もれさせる」リスクを伴います。

自社が持つ魅力に目を向け、それを「伝わる」形で外部に発信する。それは短期間で目に見える成果を生むものではないかもしれません。
しかし、それこそがブランドの「信頼」を築き上げ、長期的に顧客を惹き寄せるための唯一無二の道なのです。

ベレネッツが繰り返し言っているのは、「ブランディングとは、ロゴを作ることや広告で認知を上げることではない。
それは、顧客の心に『刺さる』認識を構築することなのだ」と言うことです。
今こそ、自社の価値に目を向け、大手には真似できない独自のブランドを育てていく時なのです。

著者・文責 (Author / Responsible for the text)

平松誠一 (Seiichi Hiramatsu)

NTTドコモ出身。在籍時は一貫して広告宣伝・マーケティングに携わる。 1996年NTTドコモを退社。独立後の現在、企業ブランディング支援会社の株式会社ベレネッツの代表取締役。
ドコモ時代は、その潤沢な広告予算で業界TOPを突き進むことができると思っていたところ、はるかに広告投資額の少ないNCC(新たに参入してきた携帯電話、ポケットベル業者)にボロ負けし、その結果から「これからの時代、ブランドの支持を得るには押し込むようなPUSH的戦術やマス媒体での広告戦術は効果なし」との認識を持つ。
以降はこれらの手法を反面教師とし、「引き寄せる」+「再現性のある」ブランディング+マーケティング事業に25年間以上携わっている。
重要なことは、ブランディングはロゴを作ったり、イメージチェンジをすることではなく、ターゲット層に刺さる認識を構築することだと考える。

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