色鮮やかでポップな店内には、宝石や果物、オーナメントのような入浴化粧品が並んでいる。元気なスタッフがモコモコとあわ立てた石鹸を手に、道行く人々に商品をアピールする。人々の鼻をくすぐるさわやかな香り。石鹸やパックには「乙女の戦士」や「ご褒美の週末」など、凝ったネーミングがつけられており、魔法のアイテムのようだ。 ハリーポッターを生んだイギリスのブランド、ラッシュの商品である。最近のエコブームで、自然派を歌う業者は増えた。その中でラッシュは独特のビジュアルマーチャンダイジングで人目を引いた。ラッシュの価格水準は決して低くないが、価格で選ばれないためには物語が必要だ。
雑誌広告など、マス媒体への広告宣伝は一切せず、市場調査もしない。その代わり口コミを重要視した。原材料はお金をかけるが、包装は簡素。防腐剤を使わず、新鮮さを生かした商品もある。これらの展開には、「自然派」という一本の筋が通っている。
ラッシュは会社をあげて自然保護の活動を行い、化粧品販売に欠かせない動物実験を行っていないことも有名である。ブームだから、とエコに便乗するだけでは、数多くの同サービス企業の中で埋もれてしまう。消費者を納得させることは難しい。エコに甘んじることでビジュアルマーチャンダイジングをおろそかにしてはいけないし、エシカル(道徳)は、”エコ”の中からさらに選ばれるためのポイントだ。
ものがあふれる世の中で、消費者は消費にどこか空虚さや罪悪感を感じているのかもしれない。
現在は真の意味での「豊かさ」を求める時代なのである。