from 福井義高 AngelRabbits LLC
これまでは、公的補助金のほか、親族からの借入、あるいはエンジェル投資家に頼るという属人的な方法が中心で、その偶然性によってその後の成否が決まるところもありました。
ところが、最近では創業間もないベンチャーの特性に合った資金調達手段も出てきました。
コンバーティブルエクイティという、海外で既に使われていたコンバーティブルボンド(CB:転換社債)の日本版のやり方があります。
これは、出資当初に株価を確定させない、即ち事業の将来に渡って手放す割合を決めないで、事業が進んだ段階で改めて決めるというものです。
これによって、ベンチャーはある程度までは投資家からビジネスの介入を受けずに事業を進めることが可能になります。
もうひとつ、分散型社会にふさわしい資金調達のやり方が急激に増えています。
いちいち中央集権的な枠組みを経由することなく、属人的な縁故からもある程度開放されて、資金提供したい個人と資金提供を受けたいベンチャーを直結させる仕組みです。
法定通貨建てでなされるものとしてはクラウドファンディングがあります。
創作活動や、投資商品的な案件も多かったのですが、少しずつ株式投資型のクラウドファンディングも出てきました。
また、何かと世間を騒がせているICO(新規仮想通貨公開)もあります。
クラウドファンディングやICOは、確かに色々な問題もあるものの、良く言えばベンチャースピリッツに共感した個人の純粋な応援や、事業化によってメリットを享受したいという直接的な願いを授受するもので、分散型生存システムの流れから必然的に出てきたものと考えられます。
エストニアやドバイに限らず、多くの国、つまり中央集権システムの総本山において分散型の管理手法の採用が進んでいるのはご存知のとおりです。
これまで中央集権システムの原動力を担ってきた通貨に関しても、国という中央集権システムとの乖離が進んできています。
企業においては、所有を独占して提供するというやり方から、シェアリングエコノミーのように、個人個人が所有している財やスキルをそのまま活用するというやり方、必然的にクラウドファンディングのように中央集権システムを経由せずに個人が個人へ財を提供する手法を提供する形態が急成長しています。
個人においては、正社員となることで個人として生存力が劣化するのを恐れてフリーランスや起業を選ぶ生き方、巨大ベンダーが支配するITシステムから、勝手に入力や出力を担ってくれるIoTがようやく注目されるといった事象は、やはり分散型の生存システムが確立されていく流れと考えられます。
毎日のようにメディアに登場する、ビッグデータ、IoT、AI、ブロックチェーンといった技術は、ばらばらに偶然発生したものというよりは、人類の生存をなんとか延命するために多様性をなんとか守ることを目的にした大きな流れに乗ったものではないかと思います。
そこでは、国や企業ではなく、個人個人の成長、成長の手段としての表現、成果物としての創造といったものが重要になってきます。
それを実現するのは、単純明快な中央集権システムではなく、複雑な分散型のシステムによらざるを得ません。
それを支えるインフラとしてこれらの技術が注目されているのではないかと思います。