コラム

BtoB企業の経営指針、実は"理念"だけでは足りないかもしれません

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MVVSS

「うちには立派な経営理念があるから...」

「社是・社訓も掲げているし...」

ベレネッツは25年以上、700社を超えるBtoB企業のブランディングに関わってきましたが、最近、こんな声をよく耳にします。確かに、経営理念は大切です。でも、それだけで十分でしょうか?

 

よくあるパターン(特に創業社長がオーナー)はこれです↓

「社員は皆、経営理念を暗記しています!」

「経営理念を朝礼で唱和します!」

「では、その理念が、お客様や新しい人材にどう伝わっているんでしょう?」と質問すると、みなさん一様に考え込んでしまいます。

実は、現代のBtoB企業が直面している課題の多くは、ここにあるのです。

なぜ今、経営理念だけでは足りないのか

昔は「良い製品を作れば売れる」時代でした。でも、今はどうでしょう?技術力は高いのに価格競争に巻き込まれる。優秀な人材がなかなか採用できない。既存の取引先からも「他社と何が違うの?」と聞かれる...。

こんな状況を変えるには、実は5つの要素が必要なのです:

  1. Mission(果たすべき使命)
  2. Vision(目指す未来)
  3. Value(大切にする価値)
  4. Spirit(大切にすべき精神)
  5. Slogan(端的な表現)

これが最新の経営理念の考え方「MVVSS」なのです。

「えっ、そんなにいるの?」と思われるかもしれません。でも、これには理由があるのです。

ある企業の変革事例

最近支援したある機械部品メーカーの例をお話ししましょう。創業50年の老舗企業でしたが、近年は海外勢との価格競争に苦しんでいました。

立派な経営理念はあったものの、「なぜその製品でなければならないのか?」「なぜうちと取引すべきなのか?」という問いに、営業担当者が明確に答えられない状況でした。

そこで、この5つの要素を整理していったのです。すると面白いことが起こりました。今まで当たり前すぎて気づかなかった自社の強み、例えば「全世界向けの24時間365日のサポート体制」や「設計段階からのわかりやすい言葉でのコミュニケーション」といった価値が、明確な言葉として浮かび上がってきたのです。

これらを体系的に整理し、社内外に発信していった結果、わずか半年で変化が現れ始めました。新規問い合わせが増え、採用面接では「御社の〇〇という考え方に共感しました」という声も聞かれるようになりました。

 

大切なのは「生きた指針」にすること

ただし、これらの指針を作って終わり、なんていうのが一番よくない。毎日の業務の中で実践し、時には見直しながら、会社の成長とともに進化させていく。そんな「生きた指針」にすることが重要なのです。

BtoB企業の皆さん、一度立ち止まって考えてみませんか?「うちの会社って、何のために存在していて、どんな未来を目指しているんだろう?」って。その答えを見つけることから、新しい成長のストーリーが始まるかもしれません。

著者・文責 (Author / Responsible for the text)

平松誠一 (Seiichi Hiramatsu)

NTTドコモ出身。在籍時は一貫して広告宣伝・マーケティングに携わる。 1996年NTTドコモを退社。独立後の現在、企業ブランディング支援会社の株式会社ベレネッツの代表取締役。
ドコモ時代は、その潤沢な広告予算で業界TOPを突き進むことができると思っていたところ、はるかに広告投資額の少ないNCC(新たに参入してきた携帯電話、ポケットベル業者)にボロ負けし、その結果から「これからの時代、ブランドの支持を得るには押し込むようなPUSH的戦術やマス媒体での広告戦術は効果なし」との認識を持つ。
以降はこれらの手法を反面教師とし、「引き寄せる」+「再現性のある」ブランディング+マーケティング事業に25年間以上携わっている。
重要なことは、ブランディングはロゴを作ったり、イメージチェンジをすることではなく、ターゲット層に刺さる認識を構築することだと考える。

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