新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令して、
約1年が経ちましたね。
日本では、その影響の大小はあれど、
全業界の8割は新型コロナの影響を受けている、と言われています。
影響が大きく出ていて、事業上にっちもさっちも行かない状態になっても、
捨てられないのが「過去の成功体験」。
今回は成功体験を捨てたあるブランドの
化粧品事業について触れていきたいと思います。
在宅ワークが推奨される職場に勤める女性の多くは、
お化粧をする機会が減り、出勤用の洋服を買い足す機会も
グッと減ったのではないでしょうか。
それに伴い、化粧品業界の売上に影響が出ていることは
言うまでもありません。
その中で各社、化粧品商品の認知度を上げたり、
他社との差別化に一層力を入れているようです。
”リブランディング”という手法も、そのひとつです。
コーセーの基礎化粧品ブランド「雪肌精」は、
美白効果のある化粧水として、発売当時から大人気を誇った
コーセー社を代表する商品です。
発売から35年を過ぎ、累計6,000万本以上を販売してきた
ロングセラー商品。
ご存知の方も多いのではないでしょうか?
青いボトルに、漢字の白い文字・・
そんなイメージがパッと浮かびます。
「雪肌精」は、製品名が漢字だったこともあり
中国圏のインバウンド消費が好調だった時代から一転、
昨今は新型コロナウイルスの影響を受け、
国内外の売上高は前年同期比で51%もダウンしている状況でした。
そこで、”リブランディング”として商品のロゴ・デザインを全面刷新し、
認知度向上と差別化を図ったことで、
新規顧客の獲得に成功しているようです。
リブランディングでまず重要になるのは、
正確に商品の力と抱える問題点/現状を認識することです。
雪肌精の場合、従来のボトルデザインやロゴで成功してきた
という成功体験があまりにも強く、
その成功体験を打ち破れない・過去を否定できない、
という風潮がありました。
若年層を取り込みたい、という戦略の一方で、
20代までの世代を対象としたマーケティング調査では、
購入した化粧水をブランドロゴのない無地のボトルに移し替えている消費者が多いことがわかったのです。
―『地球からいただいた雫、水を大事にする。水はすべての始まりだから』
という、新たな雪肌精の”ストーリー”を生み出し、
『雫』をイメージしたボトルデザインや、サステナブル視点の外箱を企画しました。
そうして、成功体験の壁を壊す「ストーリー」を基に、
商品デザインやロゴを新しくしたのです。
従来の122種類の雪肌精ブランド商品は、中高年をターゲットに販売を継続し
新たに加えた10種類の新商品は、若年層をターゲットに訴求する
という両軸展開で、顧客獲得に成功したようです。
併売開始後は、新商品の購入層は狙い通り20代30代が5割を占め、
従来商品とのカニバリズムは生じていない、とのことです。
商品の差別化とは、
見込み客が抱く問題を"解決してくれるもの”だと気づき、
その商品・サービスに価値を感じ、動き=購入へ導くことなのです。
あなたの成功体験を捨てることが、会社の新しいポジショニングに至る道かも知れません。
“出典:日経ビジネス|コーセー、雪肌精の成功体験を捨てる 35年ぶりリブランディング”