from 福井義高 AngelRabbits LLC
ベンチャー側の立場に立って、ベンチャーキャピタルや事業会社から出資を受ける際に留意すべきポイントを挙げます。
出資を受けるということは、身売りをすることです。
どれだけの割合身売りして、その対価としてどれだけの資金を得られるかという交渉です。
返済しなければならない銀行借入と違って、出資を受けるというのはお金をもらうようなものと勘違いされる方もおられます。
実際は出資を受ける対価として将来に渡って事業の何割かを人に渡したということを意味し、ただもらうのとはわけが違います。
これを踏まえたうえで、出資を受けるにあたっての交渉や契約で重要なポイントというのは大きく4つに整理されます。
第1のポイント:何を守るか
自分の事業を将来に渡って手放すのですから、逆に残すべきものは何かということを明確に定める必要があります。
例えば何があっても知財権は手放さない、あるいは事業から生まれる収益の配分、または技術の用途などが考えられます。
これらの優先順位を定めておくことが万が一の備えになります。
第2のポイント:公平性
大企業と何らかの契約を行う場合、損害賠償や守秘義務についてこちら側だけが負わされるような契約雛形であることが往々にしてあります。
あるいは損害賠償に関して一見公平に見えても、賠償額について大企業側では支払えてもこちら側が論理的に支払えるはずがない設定がなされていることもあります。
そして決定権に関しても、出資を受けた金額や、議決権の比率を著しく越えて明け渡すような取り決めを求められることもあります。
このような雛形を提示してきたり、訂正に応じなかったりするような相手とは、後日問題になる可能性が大きいので、早々に交渉打ち切りにした方が時間の節約になります。
第3のポイント:別れ方
あらゆる契約は、結局どうやって円滑に別れるかということを予め決めておくことが目的になります。
これは事業が失敗した場合でも、成功して出資者が離脱する場合でも同じです。
・売却先はどのように決めるのか
・良い売却先があっても拒絶されないか
・意に染まない売却を迫られることがないか
・創業者が株式を売却する自由度はどうか
・合弁会社の場合は、それぞれ親元に持ち帰る権利と義務は何か
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この別れ方が円滑に進まないと、関与した当事者全員が信用を失い、今後の事業や開発などについて、社会から相手にされなくなる恐れさえあります。
第4のポイント:人
相性の良いベンチャーキャピタルや事業会社を紹介してくれとか、あるいはその逆の相談を受けることもあります。
率直に言えば、人次第です。
どんなに実績があって立派な投資家でも、担当者次第で投資の決定はもちろん、その時の契約内容、そして投資後の関与の仕方が全く変わって、投資を受けない方が良かったということになりかねません。
逆に、その人が所属しているベンチャーキャピタルや事業会社とはその時に縁がなかったとしても、窓口になってくれた人によっては、一所懸命他の投資家を探してくれたり、いずれ投資可能になるように一緒に販路などを探してくれたりすることもあります。
あるいは投資業界は結構人が動きますので、窓口になってくれた人が転職して、転職先でもう一度検討してくれることもありえます。
逆も同じで、どんなに素晴らしいベンチャーであっても、あまりにも事業に対して理解がなかったり、他人の意見を聞かなかったりするようであれば、何のために出資したのか分からないことになりかねません。
もちろん世界には、一切いいことも悪いことも口を出さずに、やりたいようにさせて、ドライに株式を売却することに徹する投資家もいます。
出資を受ける際に、何を期待するかによって求められる投資家のタイプは変わってきます。