お客さんに安さ以外で選ばれるお店になるにはどうしたら良いのだろう。東京で9月に改装した京成ストアは接客路線を強化することで順調な滑り出しを成功させた。野菜を顧客の要望に応じてカットしたり、総菜の調理場をガラス張りにして公開し、ライブ感とできたてを演出したりしている。
これまでとまったく違った接客をしようとすると、従業員にとっても負担が大きい。しかし、野菜のカットや調理は元々バックヤードで行っていた通常業務である。オーダーメイドにしたり、公開したりというわずかな+アルファがスムーズに導入できた理由のように思う。
「あらかじめ切ってある野菜」というのは、これまでもあった商品だ。しかし消費者としては少しでも新鮮なものを選びたいし、切断面が増えることで衛生面も気になる。自分が選んだものを切ってもらえるなら安心だし、店員とのコミュニケーションも生まれる。
また京成ストアでは改装にあわせて従業員の制服も一新した。店舗にあわせた高級感のあるもので、店内が1つのチームとして一体化する効果もあるという。確かに制服には、オンとオフを切り替えるスイッチの役割もある。改装前は恥ずかしがっていた消費者への声がけも徐々に積極性が増すようになってきたそうだ。
どこのスーパーでも価格を抑える努力は当然している。地域の中で大して値段が変わらないのに、「1円でも安い」という理由で選ばれる店になってしまうと結局は自分を追い込んでしまうだろう。しかし、あそこのスーパーに行くと気分が良い、サービスが良い、スタッフが親切、という理由で選んでもらえたら…。
消費者にとって「安さ」は一瞬の喜び、「大事にされた」ことは記憶になる喜びだ。そしてこの大事されたという感覚は、ほんの些細な気遣いや思いやり、親切だったりする。親切、それは今すぐ、無料で、確実に導入できる販促方法だ。