2社の製造メーカーは同じ規模・でも業績は・・・
ある中堅の工作機械製造会社を経営するA氏とB氏がいました。
彼らは共に、ある業界向けの高品質・高付加価値の工作機械を製造し、顧客に直接販売していました。
A氏が当社の顧客でした。B氏はA氏の最大のライバルです。
一般的に(教科書的とも言いますが)企業の継続的な成長には、顧客に対して継続的な満足感を与え、その結果としてのロイヤリティ獲得が鍵となりますが、A氏の顧客はあまりリピート注文をしてくれませんでした。
状況としては新規顧客の大半が初回購入後、さほど時間を経ずに離れていく傾向にありました。
つまり、B氏の会社も含めた他社にスイッチされてしまうのです。
一方、B氏の会社では、初めて購入した顧客の大多数がリピーターとなり、長期にわたってB氏から工作機械を購入し続けているという情報が伝わってきました。
これにより、B氏の会社は安定した成長を遂げていたのです。
A氏とB氏は同様の高品質・高付加価値の工作機械を提供しており、製品自体も市場でのターゲット顧客やポジショニングも似ていました。しかし、なぜこの二人の結果には大きな差が出てしまったのでしょうか?
2社の違いは商流から明らかに
その答えは、B氏の会社の商流の調査から分かったのです。
実は、A氏は販売活動を「販売代理店」に委託していたのに対し、B氏は自社ECサイトで直接販売活動を行っていたのです。(つまり、B社はDtoC企業でした。)
「マーケティングは経営者ごと」と言う言葉をご存知ですか?
マーケティングは、企業が長期的に利益を獲得し、継続的に成長していくために欠かせない活動です。つまり経営者をトップに、会社全体で取り組む必要があるということです。
B氏の会社は社長直轄でダイレクトマーケティングしていることが再認識できましたが、同じような会社でありながら、リピート率に大きな差が生じる理由をさらに深掘りしていきました。
販売代理店を通じて販売する発生する問題
そこで分かったことは以下のとおりです。
販売代理店経由を販売すると・・・
- 彼らの目標は新規顧客に可能な限り多くの製品を販売することなる
- そのため、顧客が抱えている問題・悩みの解決や、将来のためのカスタマーサクセスを二の次にし、短期的な売上を最優先することが一般的になる
- その結果として、顧客が必要としない製品を押し売りされ、期待に応えられないサービスに失望して、すぐに他のサプライヤーに乗り換えてしまうケースが増える
という悪循環でした。
一方で、B氏はWEBサイトなどデジタルの接点も使い、顧客と直接対話し(もちろんB氏が自ら行うのではなく社員が行うのですが)、彼らの要望・問題・悩み・イライラは何かを獲得しようと心がけていたのです。
たとえ顧客が大量注文を希望しても、そのニーズに合わないと判断すれば、売り上げが少なくなったとしても、より適切な提案を逆にしているようでした。
結果的にこのアプローチにより、顧客は長期にわたって満足し、B氏の会社との関係を維持する傾向にあったと解釈できたのです。
顧客に合った製品を提供することで顧客満足度を高め、その結果、顧客がリピート購入する確率が高まる、というのは誰でも理解しているところです。
ところがこの基本的ながらも非常に重要な原則である「顧客が満足すればリピート購入や口コミによる新規顧客の獲得」につながる部分はおろそかになってしまっている会社も多いのです。
もちろん、すべての販売代理店が悪いわけではありませんし、中には顧客のニーズに合わせて熟考された提案を行う優れた代理店の営業担当者員もいます。
しかし、代理店は自身のビジネスモデルに基づいて経営・事業運営されており、多くの場合、短期間での高い売上を目指す傾向にあります。
このため、顧客の長期的な満足度やロイヤリティを損なうことがあり、結果として企業のブランドイメージや顧客基盤に悪影響を及ぼす可能性があることも理解したほうが良いでしょう。
ブランディングで状況をひっくり返す
このように、代理店を介した販売における問題点が明らかになった私たちベレネッツは、A氏の企業のリブランディングと顧客関係の強化に重点を置いた戦略を実行したのです。
(つまり、顧客からの見え方:ブランディングと、顧客の行動喚起:マーケティングの両軸ということです)
その基本になるものが弊社オリジナルの「T.R.U.S.T.理論」で、顧客が「信頼(trust)して行動してしまう」状況を作り出すものです。禁断のブランディング、時短ブランディングというサービスで使っている理論になります。
あまり詳細には記載できませんが、要約しますと
信頼性 (Trustworthiness):
まず、私たちはA氏の会社における顧客サービスプロセスを再構築しました。具体的には、顧客が提出したフィードバックを基に、カスタマーサポートの強化と品質保証体制の確立に努めました。また、製品の改善に関して、それを逐一WEBを通して顧客へクリアにわかりやすく発信することで、製品に対する信頼性を高めることができました。
衝撃性 (Remarkability):
私たちは、業界での話題を独占するような衝撃的な製品発表イベントを企画しました。革新的な工作機械を発表することで業界内外の注目を集め、競合他社との差別化を図りました。これらのイベントは、A氏の会社に新たな活力が生まれたのです(インナーブランディングにも効果)。
独自性 (Uniqueness):
独自の製品ラインナップを認知向上するため、製品に対して光の当て方を変える見え方をさせるようにして、顧客に対する「体験価値」が完全にライバル会社とは異なるものが際立つようにしました。
必然性 (Significance):
A氏の会社の製品が持つ業界への重要性を、WEBサイト、SNS、広報を通じて強調しました。顧客が直面している問題解決に直結するストーリーを打ち出すことで、製品がどのように顧客の「体験価値」を向上させるかを示しました。
物語性 (Tale):
ブランドストーリーに焦点を当て、創業者のビジョンや企業の歴史、製品が持つ独自の物語を顧客と共有しました。ストーリーテリングにより、顧客はA氏の会社との深い感情的なつながりを感じるようになりました。
このようにして、A氏の会社は徐々に状況を好転させることができました。顧客満足度は向上し、リピート購入率が上昇。新規顧客の獲得にも成功し、業界での存在感を再確立しました。
結局のところ、TRUST理論を適用することで、顧客との関係を再構築し、企業としての競争力を取り戻すことができたのです。