優れた技術やサービスがあると自信があるのに、なぜか投資を受けられないベンチャー企業。多くのスタートアップが直面するこの課題の本質は、意外なところにあります。それは自信からくる「自社目線」から抜け出せていないことなのです。
たとえば、あるソフトウェアスタートアップ企業の例を見てみましょう。「私たちは独自開発のAIアルゴリズムを搭載した在庫管理システムを提供しています。機械学習による需要予測の精度は95%を超え、業界トップクラスです」。確かに技術力は伝わってきます。しかし、投資家の心を動かすには不十分なのです。
なぜでしょうか?それは顧客にとっての価値が見えないからです。(ベレネッツではその価値のことを「体験価値」と言います。)同じ会社が顧客目線で価値を再定義すると、こう変わります。「小売店の廃棄ロス削減を通じて、食品廃棄物を年間1000トン削減し、地球環境の保全に貢献しています。すでに導入企業の食品廃棄コストは平均40%削減を実現しました」。体験価値も、パーパス(世の中に対する社会的使命)も入ってます。
ブランディング的な観点から見ると、この違いは決定的です。前者は技術的な優位性を述べているに過ぎないですが、後者は社会における存在意義と具体的な成果を明確に示しています。投資家が知りたいのは、まさにこの点だと考えています。その企業がなぜ存在する必要があるのか。どんな社会課題を解決するのか。そして、それをどれだけ実現できているのか。
実際、VCとの面談で頻出する質問があります。「御社の強みは何ですか?」。この問いの真意は、「あなたの会社だからこそできる価値は何か」を問うているのです。しかし、多くのスタートアップは技術やスペックを語り、本質的な価値を伝えきれていないのです。要は自社に自信があり、目線が完全に自分目線なのです。
事業計画が緻密でも心に響かないのは、数字の裏にある「価値」が見えないからなのです。売上予測や市場規模、開発計画は重要です。しかし、それ以上に重要なのは、その事業が生み出す本質的な価値であり、それがどれだけの人々の人生を変えうるのかという視点だということです。
投資を呼び込むには、自社の持つ本質的な価値を、顧客目線で再定義し、明確に言語化する必要があります。これは単なる表現の言い換えではありません。自社の存在意義を、社会や顧客の視点から捉え直す本質的な作業なのです。
技術力があっても投資を受けられない。その原因は、意外にも「伝え方」にあります。より正確に言えば、自社の価値を顧客視点で捉え直し、社会的意義として示せているかどうかにあるのです。それこそが、ブランディングの本質と言えます。
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